高校男子厨房に入る
Posted at 11/10/19 PermaLink»
昨日に引き続き、もうひとつ教育ネタを。
今時の高校では、男子も家庭科のカリキュラムがあるそうで、男女同権社会の一端が垣間見られ、今風の薫り。
ちょっと時期がずれてしまったが、うちの男子高校生にも、夏休みの家庭科の課題として、地産地消をテーマに、料理を作ることが課せられた。
彼は、面倒くさいのかそれともこれしかないと思ったかは知る由もないが、母親に手順を聞いて当店の卵を使った「オムライス」の制作を行なった。
成果の提出方法は、出来上がった料理をデジカメなどで撮影して、規定の様式で提出するというところも今風。
作り方やそのコツは、数年前に地域の料理講習会で、ホテルオークラ新潟のシェフを招き、オムライスを始めとした卵料理教室で習ったことを伝授。
おぼつかない手つきではじめたものの、出来上がりとしてはまあまあ、か。手早く行ないながらも、要所要所のポイントは間違いなくこなす難しさは、作るたびに違う出来栄えとなることからも明らか。
最終的な出来上がりをイメージして、そこまでのプロセスを逆思考するという作業手順は、クリエイターのそれと同じなのだろう。料理人のトップに男性が多いのも、そのせいかも知れない。
意外とごつい男性料理人の手も、包丁を握るととても綺麗に見えるのは、無駄の無いその動きと、そこから生まれる三次元の芸術的な食材の変化の結果だろうか。いつも、ジャズピアニストの指の動きと同じ綺麗さを感じるのも、指先から生まれるその芸術が、無から有を生むという共通性から来るものだとひとり結論付けて、悦に入ってしまう。
そんなことはさておき、男子厨房に入ることは結構なことだと思う。自らの行動を自戒してのこともあるが、自ら料理を作ることで食に対する感じ方が変わってくることを期待してである。
人間の最も強い欲求が「食欲」であるにもかかわらず、最近の食の在り方が「甘い」「柔らかい」「口の中でとろける」といった表現が尊重されやすい現実は、どう考えても味覚が「進化」ではなく「退化」しているとしか思えない。旬の食材から季節を知るなど到底期待できるはずも無く、自らが口にする食材への関心すらおぼつかない。
味覚を研ぎ澄ますことで、食材本来の味を堪能するだけでなく、ある時は腐敗や毒といった身に危険を及ぼす要因を排除できる能力、すなわち人間が生き物として備えているであろう防御能力を、きちんと呼び起こしている必要があるのではないか。
現実として高校生の我が子は、「渋い」という味覚が十分理解できないという。
関係法令まであるわが国の「食育」環境であるが、その崇高な目的と教育現場との距離はまだまだ遠い。世界でもトップクラスの日本の料理界から、力を借りてもなんら支障になるものではないと思う。
子どもの嗜好は、親の影響を色濃く反映するそうな。
父親しか伝えられない食の感覚もあるだろう。男子厨房に入るべし!
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